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指宿ゼミ

基礎理論はもちろん、
現場の生の声にも接するゼミ

刑事訴訟法 指宿ゼミ

指導教授:指宿 信

取り調べの可視化など、刑訴法の適正使用を研究

 捜査から刑の執行まで刑事手続に関する様々な事柄を定めた刑事訴訟法。その研究の中でも、冤罪は起きてはならないこととして常に解決策が求められている。冤罪を防ぐ手段の一つとして、取り調べにおける可視化の採用を指宿教授は強く提言している。

 冤罪が生まれていった過程や背景といった現実を解明し、そこから、冤罪をなくすには何が必要か、冤罪から人を守るためにはと考えることは、自分の身を守ることにもつながる、身近な学習ともいえる。

事件を我が身のように感じ、当事者の話を聞く。

 ゼミは、各学生が資料を読み込み、分析することから問題点や解決策を紐解いていく、通常行なわれるような研究発表とともに、関連する人と実際に接して考察することを重要視している。例えば、ゼミのリポートを書く上で必要であれば、可能なら実際に被害に遭った人、当事者から協力を得て、話を聞く機会を設けてもらえる場合もあるということだ。このような経験は、指宿ゼミの特徴的なことといえる。

 研究発表の際は、基本的には学生の主体性に重きを置き、教授が解説したり話し合いをリードしたりするよりも、学生が自由に自らの考えを発言し、討論する場となるよう、極力静観する。しかし、どうしても発言や討論の糸口がつかめずにいる時には、これまで多くの事件に接し、様々な立場、様々な考えの当事者や関係者の声を直接聞いてきた経験から、物事に対する多様な視点から問いを投げかける。

 旅行関係の企業に進みたいという4年のゼミ生は、

「最も身になったのは、一つの発表に対して、さまざまな見方があること、様々な立場から見てみなければならないということを学んだことです。これは法律の世界において必要なことですが、一般社会でも、特に私のようにお客様と接する仕事に進もうとしている者にも不可欠なことだと思っています」と話してくれた。

ゼミ合宿で矯正施設などを見学

 年に1度、9月頃に行なわれる3、4年のゼミ合宿では、東京近郊にある少年院や刑務所などから1カ所を選んで見学し、その近くで1泊する。見学場所を教授が選ぶ以外は、宿泊先、現地での行動予定など、主に学生が主体となって実施される。

 まず、合宿の前日に4年生が3年生にレクチャーを行なって、訪問先の予習をする。少年院と刑務所とでは、施設自体の差、立地条件、それぞれの目的によって、だいぶ様子が違っている。訪ねた先によって印象も違ってくるだろう。

 これまでには、多摩少年院,府中刑務所,愛光女子学園,喜連川社会復帰促進センター,赤城少年院などを参観。

「刑を言い渡された人たちが、どのような場所で、どのように刑に服しているか、または矯正のための生活を送っているか、その目で見ることはとても貴重な体験となるので、できる限り参加してほしいと思っています」と語る。

幅広い分野から講師を招く講演会

 法学部では、学生全体を対象として外部から講師を招いた講演会をたびたび行なっているが、なかでも指宿教授は、その豊かな人脈から開催回数も多い。そして、指宿教授が行なう講演会の運営はゼミ生が行なうことになる。一般の学生であればなかなか接する機会のない講師と直接、接し、イベント運営という日常生活ではできない体験ができるという側面もある。また、一つのことを協力して行なうことで、人とのコミュニケーション能力や協調性を培うことができ、ゼミ生同士の結束も高まる。

 昨年、2012年11月に行なわれた講演会は、映画「それでも僕はやってない」(2007年1月公開)の監督であり、法制審議会特別部会委員も務める周防正行監督が講師。

 映画製作のために2年を費やして関係者に取材したという当該作品の上映と、「映画と刑事司法について語る」をテーマに行われ、人気の映画監督登場とあって大きな話題となった。

 2012年秋から約1年間に登壇した講師は次のように様々な立場の方々。

 前述の周防監督に加え、布川事件の元被告人・桜井昌司さん、刑務所で服役し、作家、ライターに転身した本間龍さん、薬物中毒者の社会復帰を支援する特定非営利法人東京ダルクの代表・幸田実さん、少年の矯正について前・法務省矯正研修所長の林和治さん、など。

 判例などの資料を集め、整理して読み解くことも大切だが、それに加えて、先の少年院・刑務所を参観しその目で見ること、講演会や個別のインタビューによって当事者の話を聞くこと、そこから学ぶことも大きい。

「見る、聞く、学ぶ」ことが、刑事訴訟法を学ぶ上で大切なことと語る。

メッセージ

「自ら学ぶという姿勢なくして、進歩はありません。刑事司法に関する興味があること。問題意識を自分で掘り下げようという強い気持ちが大切なのです。ネットだけに頼らず、本を読み、人の話を聞きに行き、さまざまなイベントに参加し、自身でも学びを深める積極的な姿勢を求めたい。」